TACET
? LP special techniques/ 技術資料
L207, L977:逆方向に再生 "Play backwards!"!
oreloB?
このジャケットではなぜ、Boleroの綴りが逆になっているのでしょう? 答えは簡単、針先が音溝を逆に動くからです。ターンテーブルは通常どおり、順方向に回転します。しかし音楽は逆方向、つまり内周から外周へ向かって再生されます。これで普通に再生できるだけでなく、音はずっとよくなるのです。心配は要りません、何も起きませんから。間違ってあるいはいつものくせで針を外周に降ろしてしまったとしても、リードアウト・グルーブのループをずっと走り続けるだけです。反対に内側に行き過ぎた場所に降ろしたときでも、やはり何も起きないのは同じです。実際のリードイン・グルーブはセンターホールから約7cm(B面では8cm)で始まりますから、最内周というわけではありません。フルオート・プレーヤーなどで、終了スイッチが入ってしまわないようにするためです。針はそのまま音溝に入っていきます。
大音量で始まり静かに終わる音楽というのが、実際にあるのでしょうか。逆の方がずっと多いのではないでしょうか。なぜレコードはいつでも、普通とは違う方法でカッティングされないのでしょうか。残念ながらこの最後の問いに答えることはできません。
(この文章は著作権によって保護されています)
http://www.audio-activity.com/orelob-en.html
素晴らしいと言ったら褒めすぎだろうか? 他にこのような例があるのかどうかはわからない。なぜならオーディオ・アクティビティ誌ではこのような録音技術を聞いたことがないし、これについて尋ねてみた誰もが同様に知らなかったからである。そこでその背景にある事情を考え、クラシック音楽における重要性を見出すことにしよう。交響曲の録音で最も強弱が問題になるのはどこか? 言うまでもなく終楽章のフォルティッシモで、針先の速度が遅くなり変調に使えるスペースが減少するため、ある程度の歪みが生じるのである。ここにタチェットから救世主、アンドレアス・シュプレーアが登場する。グルーブの反転である。「ボレロ」の中でスピードと余裕を必要とする部分はスピードと余裕のある場所に録音し、ピアニッシモはハードルの低いところに収める。
タチェットの録音技術に関しては、いまさら多くを言う必要はない。音色もダイナミズムも高度な水準に達しているし、最終的に出てくる音は極めて快適なものだ。演奏のテクニックも、ドラマーとして言わせてもらえばクラシック音楽のテンポと拍子は何倍も不正確だということは別にして、非常に良好である。メトロノームのような正確さでオーケストラを指揮できる指揮者はほとんどないと言ってよく、ヘルベルト・フォン・カラヤンは間違いなくそのわずかな一人であった。さらに「ボレロ」は一定の規則的な歩調が15分以上も続くために、ゆっくりと微弱に始まってリズムを失わず加速もせず一定のペースで音量を増してゆくという点で、打楽器奏者にとっての極めて厳しい試験のようなものである。オーケストラの他の奏者から浮き上がって独奏者のようになってしまうのを避けるために、演奏パターンのスコア上の正確な位置を毎秒々々自覚し続ける集中力が極度に要求される。さらに最悪なのは、オーケストラをリードする代わりにそれにくっついていってしまうことだ。実際のところこうして貧弱な結果になる演奏がときどきある。
アンジェロ・ジャスパッロ
(英訳:フランチェスカ・ルビノ)
雑誌「フエン ファー」より
http://www.fanfarearchive.com/articles/atop/37
1/3712490.az RAVEL Bolero La Valse.html
!選特 ルトタ・ドンモイレ
レイモンド・タトル
昨年発売の「逆再生"play backwards"」方式による初のLPは、専門家の世界をまた同じくユーザーをも驚かせました。レコードを逆に再生する、それは本当に可能なのか? もちろん可能ですし、大きな成功をおさめたLP「oreloB」(TACET L207)がそれを証明しています。またこの方法はある種の条件の下で、重要な利点をもたらします。例えば通常のカッティングではトーンアームが内周へ行くほど、大きな振幅をトレースするのが難しくなります。テーンテーブルの回転数が一定であるため、針のトレースする距離が減少するからです。溝の凹凸は針先が正確にフィットすることができないほど狭くなり、単に表面を「なぞって」いるにすぎない状態に陥ります。曲が始めより大きな音で終わるのは、逆のケースよりもはるかに頻繁です。逆方向トレースでは、これら全ての現象に対してシステムはずっと良好に対応することが可能になります。全体として録音は普通より大きな音量で行われるため、盤によって生じるノイズから逃れてはるかに明瞭な音質を保ちます。「oreloB」に対して寄せられた疑問、すなわちなぜ最初から他のレコードも内周から外周へトレースするようにしなかったのかという点については、現在の段階ではお答えすることができません。ただ一般的に言い方をすれば、前のLPがモーリス・ラヴェルの「ボレロ」および「ラ・ヴァルス」といううってつけの作品を収めているのは確かです。これに対して今回の録音は、この点で若干鮮烈さが足りないかもしれません。とは言っても強弱のコントラストは、特性図にも見られるようにこの録音でも間違いなく明確です。グラフは両サイドでの強弱の変化を示しています。いうれも極めて小さく始まり、非常に大きな音量で終わっています。従って同じセッションで一緒に録音されたモーリス・ラヴェルの他の作品も、「ボレロ」と同じように扱わない理由はありません。タチェットでは将来的に収録作品がこの方式にどの程度適合しているかによって、あるものは「通常」の方式で、その他は「逆再生
"backwards"」での発売を予定しています。
カッティング・マシン
ノイマン カッティングレース SX74
(L207,
L977, L205とL209に使用)
基本的にはソースを半分の速度で再生し、カッティングレースも同様に半分の速度で動作させてラッカー盤を製作します。でき上がったラッカー盤を通常の速度で再生すれば、全て元のテンポとピッチで再生されるわけです。
ハーフスピード・マスタリングはより正確で明瞭、精細なカッティングを可能とします。
ハーフスピード・マスタリングについて
ハーフスピードは製作時だけ半分の速度で行うものです! 再生時は通常の状態と全く変わりません。このレコードには特別な処理は全く必要なく、音質が優れていることだけが特徴です。ちょうど職人が仕事をするのに、2倍の時間をかけるのと似ています。
ハーフスピードではテンポが遅くなるだけでなく、ピッチも2の関数で低下します。例えば40kHzの音、タチェットの録音ではもちろんこのような高音も含まれます! これも一般的な録音の20kHzと同じように記録されるのです。これによって電気系ではより高い周波数まで扱うことができ、カッティング・スタイラスはあらゆるディテールをラッカー層の中に静かに刻み込んでゆくのです。この工程は一見大変単純です。しかしカッティングに入る前に信号はさらにもう一段、フィルターつまりRIAAカーブを通らなければなりません。低域を下げ高域を上げるわけです。この変容は技術的に不可欠ですが、再生システムのフォノイコライザーで修正が施されます。不幸なことにこのフィルターは、ハーフスピード・カッティングでは誤った周波数を転送してしまいます。つまり1オクターブが高すぎるのです。しかしタチェットではこの問題も解決しました。自然で色付けのないこのLPの音質は、ご自身でお確かめいただけます。クラリネットとバセットホルンの明瞭な違い、オーボエの柔らかなカンティレーナ、ホルンの雄大な色彩のスペクトル、ファゴットとコントラバスのアンサンブルをお聴きください。そしてシュトゥットガルト吹奏楽団のエネルギッシュな演奏による壮麗な「グラン・パルティータ」に心酔して下さるものと確信しています!
TACET LPの技術資料_v1.pdf